検討:予想資料はFXFE(地上天気図、500hPA天気図/渦度)、FXFE578(850温度場/700hPa上昇流、500hPa温度場/700hPa湿数)、FXJP85(850hPa相当温位)の図とし、この範囲で予想を組み立て、実況と比較しました。
テーマとしては
1.沿岸前線の発生について予想できたか
2.強風について予想できたか
3.気圧、気温についてはどうか
としました。検討内容は以下のとおりです。
1.沿岸前線
4日00Zの関東地方局地天気図を解析すると、すでにこの時点ではっきりと沿岸前線の存在が読み取れます。4日12Zの850hPa温度場、相当温位の予想図は、ともに本州中部で等値線が南へ張り出しており、この時点における寒気の滞留を示唆しています。従って低気圧本体が接近するまで沿岸前線は強まることはあっても解消することはなさそうです。従って低気圧の本体接近前に沿岸前線による降水の先行、また接近時の降水強化を考慮する必要があります。
2.強風と3.気圧/気温
資料から5日早朝の関東地方は大荒れとなることは確実です。5日朝の状況を予想する前に、予想図から次の点を読み取ろうとしました。5日00Zの寒冷前線の位置(大手町は寒域か暖域か)、低気圧の進路(低気圧は大手町の北を通るのか南を通るのか)。まず、前線位置ですが850hPa温度場、相当温位から、5日00Zの地上前線の位置は寸前ではあるけれどもすでに東海上に抜けていると判断しました。次に進路ですが、予想資料では低気圧は4日12Zには九州、5日00Zには東北太平洋岸となっています。しかし進路が直線であるかどうかが問題です。通常発達初期の低気圧でこのような進路が予想された場合、しばらくは太平洋沿岸沿いに東進し、銚子付近に達してから北東よりに向きをかえ、急発達するような場合が多く見受けられます。直進した場合と沿岸沿いの場合では、天気の変化が著しく異なります。傾向としては :雨量
風向 風速 温度 ★直線ルート:少ない 南〜南西 強い
高い ★沿岸ルート:多い 東〜北東 弱い 低いとなります。私は、発達初期の低気圧の場合、低気圧の構造としてはまだ背が低く、従って進路は暖気移流の程度に大きく依存すると考えています。陸上に進路をとることが少ないのは、暖気移流が陸地に邪魔をされて低気圧の北側に回りこめず、従って東進してしまうためと考えています。今回の低気圧の場合、台風崩れであることと、九州に達した時点ですでにある程度発達していることからある程度の高さを持っていることが考えられます。もしそうだとすると上層への暖気移流が通常より強く、また上層の風に流される要素が強いことから通常より北よりに進む可能性があります。ここでは発達初期の低気圧について行うような沿岸沿いに進路を修正して考えることをやめ、ほぼ直進と考えることにしました。従って寒冷前線通過までは強い南風を予想することになります。(前線通過前は南西20mぐらいまでありうる)。00Z時点では風は北西10m温度は850hPa温度場から22℃を予想しました。
実況:局地図を解析していくと、低気圧はひとつにはまとまらず、メインの低気圧とは別に、日本海に進んだものがあるようです。これは地上予想よりも850の温度/相当温位の図で示唆されています。私はこれを軽視していました。低気圧の本体は九州から北東進し、飛騨高山近辺まで進んだ後、山地を避けるようにして関東へ向かいます。ここでジャンプがおき、関東地方に低気圧が発生し発達しながら北東へ向かいます。この時点では沿岸前線は低気圧本体の温暖前線となっているのですが、北上して、大手町は暖域となっています。温度差は大きく前線の南北で10℃ぐらいはあります。問題はこの後の動向です。総観場的な意味での前線は5日00Zには東海上に抜けていると見たのは正しかったと思います。しかし大手町の風は南西風のままであり、関東には低圧部が残ったままです。北よりの風に変わるのは夕方以降です。検討時、予想資料からはこれが読み取れませんでした。これは日本海に進んだもう1つの低気圧から伸びる気圧の谷(前線があるかどうかなど詳しいことはまだ見ていません)の影響ではないかと考えています。
反省:日本海に入るもう1つの低気圧の影響を見落としていました。局地天気図検討会だからといって地元ばかり見ていると見落とします。気をつけたいと思います。(今村明男氏 談)
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