第82回(2016/2/27)神奈川支部例会 横浜国立大学 教育人間科学部 講義棟6号館‐102

特別講演「アルゴ計画(海洋観測の大転換)について」(横浜地方気象台 吉岡 典哉 次長)

アルゴフロートという海中を昇降しながら水温・塩分・圧力等を測定する測器を全球海洋に3000個を展開するプロジェクト「アルゴ計画」。
アルゴフロートによって海洋内部の情報を把握できるようになったことで、気象庁では大気海洋結合モデルを用いたエルニーニョ予測の精度が向上しました。
また、気象学で発展していたデータ同化技術を使って、人工衛星による「海面高度」データを海洋モデルに取り込み、全球海洋をマッピングするプロジェクトGODAE(ゴダーエ)というプロジェクトについての紹介もありました。
海洋の研究は、大気の研究に比べるとどうしても遅れていましたが、アルゴ計画とGODAEによって遅れを挽回しつつあることがわかりました。
考えてみれば当たり前ではあるのですが、大気だけでなく、海面にもデコボコがあることがわかったというのが、興味深かったです。

招待講演 「気象写真撮り歩き、裏話」(岩槻 秀明 様)

岩槻さんが各地を飛び回り、カメラに収めてきた多様な大気現象、大気光象、地面現象を写真とともに、裏話もご紹介いただきました。
内容は馬蹄雲や白い虹、茨城県の久慈川におけるシガ、長野県で観測された雨氷(うひょう)などの話、猪苗代湖における飛沫結氷など多様にわたります。
美しい写真がたくさん出てきてとても見ごたえがありましたし、ひとつひとつの裏話も非常に興味深かったです。岩槻さんのフットワークの軽さには頭が下がります。
休憩時間に、たくさんの方が岩槻さんのもとに自分で撮影した写真を見せに来ていたのも印象的でした。

筆保研究室学生発表

会員発表
全3件の発表がありました。みなさまそれぞれ、とてもわかりやすい発表でした。会員からの質問もたくさん出ました。
「1900年から2014年における日本の台風上陸数」(修士2年 熊澤さん)
台風の上陸に対して、気圧と風向を用いた独自の定義を設定 し、過去115年間に日本に上陸した台風を検出した。そして115年間での台風上陸 数や強度の変化、上陸台風とエルニーニョ・南方振動 (ENSO)や地球温暖化との 関連について調べた内容を発表されました。
「横浜国立大学における海風の研究〜数値実験と観測から〜」(4年 小林さん 森田さん)
横浜国立大学において、どのような海風が吹くのかを、数値実験と観測の 両面から考察しました。東京湾と相模湾の2つの海が影響しており、流入 時刻の差は、横浜国立大学とそれぞれの海の間の距 離や、温度差の違いによることがわかりました。
「領域大気海洋結合モデルを用いた現在気候と将来気候の降水分布」(修士2年 森山さん)
全球モデルによる将来気候実験を領域大気海洋結合モデルを用いてダウンスケーリングを行ないました。その結果、モデルに海洋を結合することによって温 暖化は抑制され、さらに将来の降水量も海上で は減少し、陸上では増加するという結果になり、結合無しのモデルの海上では増加し、陸上では減少する という結果と逆の結果となりました。

会員発表

「「神戸の『IPCC報告書を根掘り葉掘り読む会』について」(池辺 会員)
神戸市にて行われている「IPCC報告書を根掘り葉掘り読む会」の紹介および、池辺会員自らの参加記。IPCCのAR4およびAR5の原文について、数百回のワークショックを通じて精読が行われている様子をご紹介いただきました。この会の参加者は自然科学に精通した方々が多く、ワークショップのレベルはとても高いです。今まで地元の新聞社が取材に来たものの、内容が高度すぎて記事にならなかったそうです。この会の存在を記事にするためには、相当の専門知識がないと難しいということがわかりました(なお、会員発表に合わせ、池辺会員がこの会について紹介した日経新聞の記事も配布されました)

懇親会

横浜駅近くのお店で、筆保研究室の学生9人を含め38人で懇親を深めました。途中、岩槻さんへの質問コーナーをもうけ、参加者からは活発な質問が出て盛り上がりました。

参加者数

例会61名(懇親会38名)

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