日曜インタビュー 日本気象予報士会岡山支部 渡辺雅彦支部長 気象予報士の活動拡大 イベント重ね関心高める
掲載日:2007年12月9日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:33ページ/山陽新聞社提供
直言 気象変化は地球環境そのものを反映する
日本気象予報士会岡山支部が今年八月*1に発足した。気象予報士の資格を持つ岡山県内の大学教授や会社員、マスコミ関係者ら二十人のメンバーで構成し、市民向けのイベント開催などを通じて気象への関心を高めるという。同支部の渡辺雅彦支部長(就実大薬学部教授)に発足の狙いや活動の展望を聞いた。
―岡山支部発足のいきさつは。
「県内の気象予報士で個人的レベルの交流があり、二〇〇五年から岡山地方気象台の職員を講師に呼ぶなど定期的に勉強会を開いていた。活動を対外的に発展させ、天気を身近に感じてもらおうと支部を立ち上げた」
―どんな取り組みを。
「十一月に日本気象予報士会の主催で気象技能講習会を岡山市で開催した。岡山地方気象台の施設見学も予定している。いずれも会員対象だが、これからは気象台と連携を深め、セミナーや講師派遣など支部が県民と気象台を結ぶ橋渡し役になればと考えている」
―今後のビジョンは。
「(先行した)関西支部は、小学生や一般を対象に天気に関する雑学的な情報を分かりやすく紹介する『お天気教室』が盛ん。岡山にも県北の広戸風など独特の気候風土がある。同様の教室を岡山で開くのも将来的な目標の一つだ。気象に関するイベントを重ね、生活に身近な天気への関心を高めてもらいたい」
―会員はさまざまな職業で、大学薬学部で教える渡辺支部長も気象は専門外。どうして資格を取得したのか。
「もともと地理が大好きで、旅行先や外国の地図を眺めては、風土を想像していた。気象は風土を形成する上で密接にかかわる。気象への興味が高まり、三度目の挑戦で試験に合格できた」
―気象予報士へのニーズをどうとらえ、いかに対応していくべきか。
「現在の天気予報は岡山を例にとると、県北と県南で大別されているが、大まかだ。自分の住む地域の予報といった、よりピンポイントの情報が求められているのではないか。農業関係者は気温や降水量の変化とそれを受けての対策、行政関係者は台風の規模や進路など災害時のより詳しい予報が必要だろう。幅広いニーズに応えた情報を発信できるよう予報士のレベルアップを図りたい」
―温暖化や局地的な豪雨など近年の気候変化は気になるところだ。
「気象の変化は、地球環境そのものを反映している。偏西風で運ばれる大量の黄砂は、中国大陸の砂漠化が進んでいることを意味するし、新聞などに登場する紫外線情報は、オゾン層破壊の進行を物語る。私たちが暮らしの中で感じる気象変化と地球環境は身近な関係がある。気象への関心を抱くことで、地球環境全体を考える意識を形成する一歩になるはずだ」
ここに注目
外出する時はその日の天気をチェックするし、災害時には的確な予報が生命や財産を守る。天気は生活、産業などあらゆる面で私たちに身近な存在だ。それだけに干ばつや豪雨など近年報告される世界的な異常気象の背景を予報士ならではの視点で読み解き、提示できれば環境保護意識を高めることにもつながるはず。支部発足は予報士の専門的な知識や技能を広く社会に還元し、共有できる好機でもある。
(小林貴之)
わたなべ・まさひこ 1983年に東京農工大卒業後、国立衛生試験所、国立がんセンター研究所などを経て2004年から就実大薬学部教授。専攻は生活環境化学。07年8月から日本気象予報士会岡山支部長。愛知県出身。46歳。
ズーム
日本気象予報士会 1996年に全国の気象予報士で組織した気象予報士会が前身。会員は約2300人に上り、岡山を含め地方、県単位で22の支部*2を持つ。気象に関する知識の普及や予報士の技術力向上に取り組む。
(記事は全文そのまま転載、記載事項は当時のもの)
*1 岡山支部は2007年5月26日の日本気象予報士会第12回定期総会で正式承認されている
*2 岡山支部を含め、現在18組織が、日本気象予報士会の支部として承認されている
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