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平成11年度第1回気象予報士試験問題解答予想及び検討結果
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学科試験解答(予想です)、[青字]部分は、検討結果です。
[赤字]部分は、その後の注記です。
専門学科
問題..解答
1......3
[地上気象観測に関する記述:
地上気象観測に関するごく常識的な問題です。
問題文に見られる様に、観測の技術的な事項だけでなく、
その観測が、どの様な予報と結びついているかの、観測結果の
利用技術とリンクしての知識・理解が必要です。]
##間隔に関するクイズです:
17km四方は、アメダス雨量。では、アメダス四要素は??21km四方です。
3時間天気予報は20kmメッシュ、数値予報の格子間隔も20km四方、
降水短時間予報は??5kmメッシュです。
話は飛躍するようですが、数値予報の領域モデルは鉛直方向に、36層です。
2......1
[高層気象観測に関する記述:
高層気象観測は、観測点の高度が高いと言うことだけでは、
高層気象観測を行なっているとは言えません。高層気象観測は、
その地点の上空30km程度までの大気の状態を観測する必要があり、
そのための特別な観測設備、体制を必要とします。]
##高層気象観測では、気圧、湿度、気温をセンサーで測定します。
高度や風向・風速は観測所のミニコンで計算され、計算結果が観測値と
される様です。高度や風向・風速は測定機器で実測した値ではありません。9/16##
3......2
[気象レーダー観測に関する記述:
気象レーダー観測の基礎的な知識を問う問題です。
気象レーダー観測は、降水短時間予報のために、降水強度や、
降雨域決定、降水量決定のための重要な情報を提供します。]
4......4
[数値予報に関する記述:
数値予報モデルは、プリミティブ方程式によって数式表現されて
いますが、風、密度、温位の方程式に関しては、物理過程として、
パラメタリゼーションが行なわれています。
物理過程とは何か、どの様な現象が物理過程として
処理されるか、などを理解しておく必要があります。
また、プリミティブ方程式で表されている現象は何か、
その式の成立する前提は何か等についても、知っておく必要があります。]
##(b)の問題文に関してですが、
雲の存在は、数値予報上非常に大事な役割を持っています。
短波放射に対しては、地球を冷却する効果があり、
長波放射に対しては、地球を温める効果があります。
差し引き雲の存在は、地球を冷却する効果があります。
しかし、題意の様に問題を限定されると、どこまでを視野にいれて
解答すべきか、その判断が困難です。
雲のtopは長波放射での冷却効果、雲のbottomは、
地球の長波放射を吸収し、暖める効果があります。
ただし、(d)の境界層の記述が明らかな誤りの様ですので、(b)の問題文を
積極的に誤りとすることも出来ませんので、正しい文と考えることとしました。
5......1
[数値予報プロダクトに関する記述:
数値予報モデルの稼働結果として、GPVが算出されます。これは、
高層気象観測のデータや第一推定値を主な初期値としています。
GPVとして、多くの気象要素が算出されますが、算出結果は、
次のように2分類出来ます。
1.プリミティブ方程式の解として算出されるもの。
(風向・風速、密度、温位、比湿)
2.上記1.の結果を関係式にあてはめて算出されるもの。
(気圧、渦度、鉛直P速度、湿度、露点、湿数、、、)
さらに言うならば、GPVだけでは天気や確率予報などが出来ませんので、
翻訳を必要とします。即ち、KLMやNRNを経由して、
予報のためのガイダンスが作成されます。]
##気圧は、dp=−ρgdz でプリミテイブ方程式の中に変数
として入っていますが、算出された密度を下層から上層へ積み上げる形
で計算されますので、2.へ分類しました。##
6......1
[数値予報プロダクトに関する記述:
数値予報モデルによって、気象の予報を行なおうとする場合の、
基礎的な知識を問う問題です。即ち、
GPVとは、そもそも何者か、予測可能期間は何に左右されるか、
モデルの精密さ、観測点の密度が問われています。
気象現象の時間・空間スケールによって、現象の表現が適切に
出来る・できないの問題があります。又、プロダクトには、様々な
要因により、誤差が多かれ少なかれ入り込んでいます。従って、
数値予報プロダクトを利用する場合は、それなりの注意
を払って利用する必要があります。]
7......5
[台風に関する記述:
この問題は、台風に関した基礎的な知識を問うものです。
台風のライフサイクルは、しっかりと理解しておく必要があります。
このほか、台風の構造や、台風の経過にともなって発現する様々な
気象現象なども、十分理解しておく必要があります。]
##台風が温帯低気圧に変わる条件は、永沢著、「天気図の散歩道」
p.147によれば、中心から前線が解析された、または中心付近の暖気核が
上層まで消滅したとき、とのことです。ただし、台風が温帯低気圧に変わった
からと言っても、勢力が衰えてしまった、とは限りませんので、
この点要注意です。9/14注記##
8......5
[冬型の気圧配置に関する記述:
冬季の典型的な、総観規模の気象現象及び、付随する現象です。]
9......4
[梅雨前線に関する記述:
これも、梅雨前線に関する、基礎的かつ常識的な問題です。
(a)は、前線の東西における性質に相違があること、即ち温度傾度と
湿度傾度の違いがあること。
(b)は湿舌の話です。
(c)は、850〜700hPaに下層ジェットが見られること。
(d)は、この問題の誤りを見分けられないひとはいないと思われる位、
明白な誤りの記述です。]
10....3
[気象衛星画像に関する記述:
(a)可視画像は、太陽高度に応じた補正は行なわれていませんので、
それなりに注意して見る必要があります。
(b)の、雲域の「立体構造」までは、気象衛星画像で把握することは
困難です。なぜなら、可視も赤外も表面から反射される電磁波を観測
していますので。。。。
(c)、(d)は知識として知っておくべき事項です。]
11....2
[降水短時間予報に関する記述:
降水短時間予報は、大雨注意報や同警報の発表があったときに発表される
非常に精度の高い予報です。
@の記述は、十分ではありません。
降水短時間予報の作成のためには、レーダーエコー、アメダス雨量、
数値予報、地形データが必須です。
A降水短時間予報のために、数値予報と同様、「初期値」が必要なのです。
その初期値の求め方の話です。
B降水短時間予報における、降雨域の予想は時間外挿されます。
降水量は地形効果による降水の強化、衰弱が加味されます。このため
数値予報の風と気温のデータが使われます。
C降水の予想のための初期値は、観測されたレーダーエコーとアメダス
データから、決められます。そして、降雨域は、パターンマッチング
と言われる手法で時間外挿されて求められます。従って、急速に発達・
衰弱するような小規模の擾乱による降水を精度よく予想することは、
困難です。
D降水短時間予報は、雨や雪と言う様な天気の「種別」を予報するものでは
ありません。したがって、雨・雪判別の必要性はありません。必要の無い
作業は行なわれません。]
12....3
[天気予報ガイダンスに関する記述:
@この問題文は、3時間ごとの天気と気温の「分布予報」に関する記述の様ですが、
約「20km四方」ごとに予報されています。
なお、降水短時間予報は、5kmメッシュで予報されます。
AKLMもNRNも、従来の方式(PPMやMOS)に比較して精度は改善されて
いる様です。しかし、格段に精度向上しているものでもありません。日々の天気
予報を見れば、明らかです。さらに、KLMとNRNを重相関回帰式による方式
に較べていますが、NRNもKLMも重相関回帰式を使っています(?)ので、
関係式に関する記述も、不適切であると考えられます。
いずれにしても、記述は誤りです。
B数値予報モデルの改善などによりモデルの変更がある場合、KLMもNRNも
MOSが必要とした様な2〜3年分の長期の実績は必要無く、もっと短期間の
実績で対応できる様です。
C風のガイダンスには、地形効果が反映されている様です。
D数値予報のバイアスの補正は出来ますが、擾乱の位相のズレまでは、
補正できない、と言われています。]
13....4
[降水確率予報の精度評価に関する記述:
降水確率予報の精度評価はブライアスコアによって行なわれています。
スレットスコアは、警報などの希にしか起こらない現象に使われています。
いずれにしても、検証方式の定義に関する問題です。]
14....3
[注意報、警報に関する記述:
この問題で最も難しいと考えられるのが、@とBの正誤判断です。
@は、法律の条文をよく読むと正しいことが分かります。
Bの記述は、一見よさそうですが、消防法に照らし合わせてみると、
「怪しい」記述です。積極的に誤りとすべき記述とも言い難いですが、
その他の記述が、明らかに正しいので、Bが誤りとなります。
当問題解答にあたっては、北海道気象予報士会からのご教示をヒントとさせて頂きました。]
15....3
[気象災害に関する記述:
どの記述も正しそうに見えますが、Bの記述のうち
表層雪崩は適切ではない様です。全層雪崩とすべきと考えられます。]
##以前、[深層雪崩]と表現しましたが、この表現はありません。
「底雪崩」あるいは上記のように「全層雪崩」と訂正します。
ただし、日本雪氷学会の表現によれば「面発生湿雪全層雪崩」とすべきかも知れません。
いずれにしても、地面に接した雪が溶けて雪の全層が滑り落ちます。
なお、雪崩でおおいのは「表層雪崩」の様です。
気象注意報としては、雪崩注意報があります。
雪崩の速度は、「気象の事典」によれば、
全層雪崩は、10〜30m/s、
表層雪崩は、30〜50m/s、
粉雪の場合の雪崩は、60〜100m/s
とあります。(9/14注記)
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以上、「伝聞」風の表現があって申しわけありませんが、
記述に過誤があるかも知れません。
皆様の、ご指摘、ご教示をお願いいたします。
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佐藤 元
電話:044−811−2628
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