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平成11年度第1回気象予報士試験問題解答予想及び検討結果

--------------------------------------- 学科試験解答(予想です)、 [青字]部分は、検討結果です。 [赤字]部分は、その後の注記です。 一般学科 問題..解答と検討 1......1 [地球大気に関する問題: 地球大気の化学組成が地上80kmまで一定であるのは、 分子拡散が原因ではなく、大気の対流などによる攪拌が主な原因と考えられる] 2......2 [湿度、飽和水蒸気圧に関する問題: 飽和している大気の温度を加熱した場合の湿度の求め方は、皆さんご承知ですが、 問題文において、話が複雑になっているのは、上記の様に 飽和→未飽和 の様な変化でなく、未飽和→凝結(飽和)→未飽和 の状態変化の過程の中で、 凝結すること、或いは凝結量をいかに考えれば良いか、と言うことが、 試験の場の短時間のなかで、判断することが、非常に困難と考えられます。 凝結を考慮した上で、次のような思考プロセスにて、問題の解答に至りました: ・露点における水蒸気量は題意より(1/2)Ea相当になる。 (以下、相当の語彙を省略します。又、飽和水蒸気圧は飽和混合比に比例する、とします) ・水蒸気は過飽和状態になるまで冷却される。 ・過飽和水蒸気が凝結量となる、即ち、露点とTbにおける飽和水蒸気量の差が 凝結量となる。これは、(1/2)Ea−Eb である。 ・この凝結量が、系外に持っていかれる水分となる。 ・系内に残存している水分は、 {(1/2)Ea−[(1/2)Ea−Eb]}=Eb である。 ・この水蒸気がTcまで加熱される。 ・その時の相対湿度は、(Eb/Ec)X100% となる。 ・この問題は、降水量算出の考え方に応用できそうです。 ・この問題のポイントは、露点以下にまで冷却されることに気づくことが大事です。 ・もし、温度低下が露点止まりであるなら、飽和状態にはなるであろうが、 凝結した水分を除去できるに至らないであろう。 要するに、この問題に解答するだけなら、もともとの水蒸気量の存在は殆ど関係ない と言ってもよい様です。] 3......4 [気体定数の単位の求め方: 気体定数の単位を覚えているひとは殆どいないでしょうが、その単位を誘導する方法は、 知っておいた方がなにかと便利です。 そのためには、「求める変数を含む関係式を適宜持ってきて単位を計算するとよい」と 言う方針を持っていることが大事です。 今回のケースでは、気体の状態方程式をベースにして単位を誘導するのが、簡便でしょう。 P=ρRT の式から、R=P/ρT と変形し、個々の変数には数値を代入するのでなく 単位を代入します。個々の変数の単位は、P=Nm−2=Jm−3、ρ=Kgm−3、T=K、 即ち、R=[Jm−3/(Kgm−3・K)]=[JKg−1K−1] と算出されます。 (べき乗は−2とか−3 の様に表示しました) 4......5 [地球の回転を感じる気象現象を選ぶ問題: 即ち、コリオリ力を考慮すべき問題です。偏西風、温帯高低気圧、海陸風、、など有ります。 カルマン渦、ヒートアイランド、竜巻、つむじ風、、は、規模が小さいため、 コリオリ力を感じ得るほど、時間・空間スケールが大きくありません。] 5......4 [地衡風風速と気圧傾度力の関係に関した計算問題: 非常に基本的な関係式です。 地衡風風速が気圧傾度力に比例することを承知している必要があります。 即ち、fv=G であらわされる関係式です。 f=コリオリパラメーター、v=地衡風風速、G=気圧傾度力 とします。 3つの関係式を作り、緯度、風速、気圧傾度力を整理するとよいでしょう。 f30・v10=G1 f30・v20=GA f60・v20=GB GA、GBを求める必要があります。 f30=2ωsin30=2ωx(1/2) f60=2ωsin60=2ωx(r00t3/2) v10=10 v20=20 G1=1 以上より、 GA=2G1=2 GB=f60・(v20)=f60・(GA/f30) =GA・(f60/f30)=2x(root3) =2x1.73=およそ3.5 となります。] 6......3 [気圧低下による海水面の高さの上昇量を求める: 昔からよくある問題です。計算しなくても、即座に、1hPa<==>1cm の対応になっている、と思い出して下さい。 (この問題は、「ご馳走」です。) 次の様な近似計算で、その裏づけとなる根拠を固めて置きましょう。 大気及び海水の、いずれも単位面積当たりの重量を考えます。 大気は、高度差10kmで10000kgの重量、 水は、高さ10mで10000kgの重量、 このいずれも、単位面積あたりにかかる重量は10000kgである。 10000kg/平米=1000hPa である。 故に、1000hPaで、大気高度差=10000m また、1000hPaで、水の高さ=10m=10x100=1000cm 即ち、1000hPaにたいして、水は1000cmが対応することとなる。 即ち、この比例関係より、1hPa当たり、水の高さ=1cmとなる。 ] 7......5 [南北方向の風速分布をあたえて、渦度の正負を問う問題です: 風速が極大になっている近傍の北側は正方向の回転、南側は負の回転になります。 回転方向の正負の決め方は、気象でなく、数学や物理学の回転方向の定義によるものです。] 8......5 [温度風の特徴を述べた問題です: 温度風の定義を思い出して下さい。 南へいくほど&高度が高くなるほど、気温の差が大きくなり&風速も大きくなります。 これは、地衡風平衡と静水圧平衡 を前提として、誘導される関係です。 fv=−G=−(1/ρ)(dp/dy)、 dp=−ρgdz の2式から、微分演算を行って温度風の関係式が導出されます。 式及び導出過程は省略します。] 9......4?(<--4ではなく、2の様です) [「熱」輸送に関する、輸送「方向」の問題です: 「熱」と言う物理量は、数学的取り扱いを行なう時は、他の物理量と同じく、 符号を考える必要があります。即ち、熱には「正の熱」と「負の熱」があり、 「正の熱」は、単に「熱」と表現するようです。 ##「符号」と言うものは、ある考える領域(空間)において、 空間内に状態の勾配、傾き、傾斜、傾度が存在することを意味する、と考えてみる: 物質の重量や水蒸気量などは、一般常識から考えると「負」の状態はありえない、 と思われますが、熱(物質の持つエネルギーと考えます)も同様で「負」の熱と 言うものは考えにくいです。そこで、低緯度にある大気は「正」、高緯度にある 大気は「負」として考える(もう少し俗っぽく言うと、暖かい熱は正、冷たい熱 は負と考える)と、この種の問題への対応の仕方(考え方の指針)に、有用であ ろうと思います。(0°C以下の温度を持つ大気塊が負の熱を持っていると言う ことでは有りません。摂氏という温度の単位は、たまたま身近な水の相変化の 状態の観察からそうしたのであって、厳密には絶対温度で話をします。) そして、「熱」が運ばれる方向は、自分が何を検討するかによって、適宜座標軸を 決めればよさそうです。絶対的な「正の方向とか負の方向」と言うものはなさそう です。 しかしながら、この問題に見られるように、方向性を問われる場合は、「方向の 正負を決めた上で問題文全体を通して考える様にしなければなりません」ので、 「赤道から両極へ行く場合」や「地表から上空へ行く場合」を「正の方向」と 考え、問題文を検討するとよさようです。 もう少し言うならば、熱移動は、熱やエネルギーの傾度のある場において、高い方 から低い方へ流れる、と考えます。 この考え方は、熱に限らず力の傾度のある場において、物体がその傾斜の下方 に向かって移動する力を受けるのと似ています:加速度といいます。 気圧傾度力は加速度の一種です。 なお、物質の濃度や密度の傾度がある時も拡散や移動が生じます。 この傾度は、物理量の「移流」に密接に関連しています。 気象における物理量の「移流」が天気変化の源泉です。ここでは、これ以上 話を広げません。10/07注記## (a)水蒸気は上昇し潜「熱」を上方へ運ぶ。雨などは、下方へ蒸発「熱」を運ぶ。 即ち下方はマイナス方向で、蒸発熱もマイナスの熱と考えると、降水現象は、 上方へ熱を運ぶ事となります。 ##水の相変化における反応熱は 液体−−(蒸発熱)−−>気体の場合は、吸熱反応、 気体−−(凝結熱)−−>液体の場合は、発熱反応、 と考えます。 要するに、気体の状態の方がエネルギーレベルが高いと理解します。 エネルギーレベルの高い状態の気体がエネルギーレベルの低い液体へ変化するためには、 エネルギーレベルの差に相当する熱の放出が必要です。逆も真と考えます。9/16注記## (b)氷山はマイナスの熱をマイナス方向へ運ぶ事となる。 従って、氷山は極向きに正の熱を運ぶ事となる。 問題文の記述は、誤りとなります。 (c)温帯低気圧は、暖気を極向きに運ぶ、寒気(マイナスの熱)を赤道方向 (マイナス方向)へ運ぶ。 従って、温帯低気圧は、いずれにしても、熱を極向きに運ぶ事となる。 (d)寒気(マイナスの熱)の低緯度への吹き出し(マイナス方向)は、 極向きに熱を運ぶ事となる。 当問題解答にあたっては、北海道気象予報士会からのご教示をヒントとさせて頂きました。] 10....3 [火山噴火が気候に及ぼす影響についての問題: ごく常識的、基礎的な問題です。 火山噴火伴う噴出物が、気候にいかなる変化を及ぼすかを承知しておく必要があります。 解説は省略します。] 11....3 [気象業務法第1条、目的に関する記述: 気象業務法とは何か、を端的に謳った条文です。 気象庁は、運輸省の管轄下にありますので、「交通の安全」の文言がはいっている 様です。「社会の秩序の維持」は、気象庁の役割でもなければ、運輸省の役割でも ない、もっと、ハイレベルの役割、と考えられます。] 12....1 [気象業務法に規定された、許・認可に関する記述: 許可・認可の対象となる気象業務、 だれが許可・認可するのか、 「許可」とか「認可」と言う用語は同じか違うのか、 関連罰則規定などを関連付けて、思い出せる様にしておく必要があります。] 13....4 [気象業務法に規定された、気象予報士に関する記述: 気象予報士となるための法的手続き、 気象予報士が行なうべき業務、 気象予報士の資格が無くても可能な業務 などを理解しておく必要があります。] 14....3 [予報・警報に関する記述: 気象業務法、防災三法(災害対策基本法、水防法、消防法)について、 注意報・警報等の情報の伝達手順、責任者、取るべき措置 などを理解しておく必要があります。] 15....1 [気象に関連した法律上の行為、義務に関する記述: 気象業務法及び関連法規の幅広い理解が必要です。 法律が許していること、許していないこと、法律が求めていること、 法律が求めていないこと、などの観点を意識して、明瞭に理解しておく必要があります。 ここでは、問題文の一つ一つを解説することは省略します。] --------------------------------------- 以上で、解説を終了しますが、説明は十分でしたでしょうか。 佐藤の、理解違いがあるかもしれません。 皆様からの、ご指摘・ご教示を宜しくお願いいたします。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 佐藤 元 電話:044−811−2628 FAX :044−811−2628 E-mail:satoh@ny.airnet.ne.jp