3. Beaufortはどう読むのが正しいか?

 

 これはほとんどの本でビューフォートとなっています。辞書、事典類でビューフォート表記されているものは(例えば順不同)気象科学事典(東京書籍)、気象の事典(東京堂出版)、気象ハンドブック(朝倉書店)、気象の大百科(オーム社)、海洋大事典(東京堂出版)、科学大事典(丸善)、理科年表(丸善)、マグローヒル科学技術用語大辞典(日刊工業新聞)、理化学辞典(岩波書店)、学術用語集 気象学編(日本気象学会)、広辞苑(岩波書店)、広辞林(三省堂)、辞海(三省堂)、大辞林(三省堂)、日本語大辞典(講談社)、世界人物事典(旺文社)

等です。探せばもっとあるはずです。

 また気象学の教科書では、海上気象学(馬場信倫、嵩山房、明治40年刊)等を始めとして大多数がビューフォートとなっています。

  一方、ボーフォート表記となっているものは、英和辞典および英英辞典(例えば岩波英和大辞典、研究社新英和辞典、小学館ランダムハウス英和辞典、The American Heritage Dictionary, Standard Dictionary, The Concise Oxford Dictionary, Longman New Universal Dictionary, Supplement to O.E.D.)の発音記号です(ただし英和辞典の場合、どういう訳か日本語ではビューフォートになっているものもある)。

  一方、英語の辞書以外ではわずかに岩波=ケンブリッジ世界人名辞典(岩波書店)、海の英語(佐波宣平、研究社)、気象用語集(田島成昌、成山堂)、気象の事典(平凡社)、学研新世紀百科辞典(学習研究社)等があるのみです。

  この現象は明治以来「美氏風力階級」とも呼ばれてビューフォートの読み方が定着してしまったためのようです。Beautifulの発音に影響されていることは、上記の「美氏」の用例から類推できます。Beaufort氏はフランス系イギリス人のようですから(注)、英語の辞書が示すようにフランス語のBeau-の発音に従うのが正しいと思われます。

  なおBeaufort Seaの場合はほとんどがボーフォート海となっています。この混乱はわが国だけでなく英語使用圏にもあるようです。比較的最近のテキストDanielson,Levin,Abrams共著のMeteorology; McGraw-Hill, 1998, ISBN 0-697-21711-6の10頁でもわざわざボーフォートと発音するように書いてあるところを見ると、どうやら洋の東西を問わず間違って発音する人が多いようです。

 

注: Beaufortの伝記の単行本はあまりないようですが、

   Alfred Friendly; Beaufort of the Admiralty,London,Huchinson,1977, 362p,

    ISBN 0-09-128500-3があります。

                            2000/02/27  福谷