3.ソメイヨシノを見分けよう

ソメイヨシノの見分け方講座

 それでは、次に注意すべき桜の品種をいくつか紹介します。桜の品種で最も早く咲くのは、カンザクラの仲間です。開花の時期が2月中旬〜3月であるため、ソメイヨシノであるとしてしまうことは滅多にないようですが、一見すると開花の時はまだ葉が伸びていないなど、ソメイヨシノによく似ているところがあります。伊豆半島で早春に咲くカワヅザクラカンザクラの仲間です。全体的にカンザクラの仲間は花期が長く、花の色もピンク色が目立ちます。うつむきかげんに咲くことも見分け方のポイントです。3月になっても咲き続けていますが、ソメイヨシノが咲く頃にはほとんど散っていて葉も展開しています。琉球地方で桜の開花に使われている紅色のカンヒザクラカンザクラの仲間といえます。
 次に、エドヒガンの仲間はソメイヨシノよりもやや早く咲き始めますが、大きな差はなく花期が重なります。ほぼ白色の花を咲かせ、しかも開花期にはまだ葉は展開していません。長寿の桜として大木になり、各地で観光客が集まる桜として親しまれていますので、間違えてしまう可能性は十分にあります。しかし、よく注意してみれば、エドヒガンは花の大きさがソメイヨシノよりも明らかに小さく、花の密度も少し低いので華やかさはソメイヨシノにおよばないことなどから違うことがわかります。見分け方のポイントとしては、萼筒(がくとう)の赤味が目立ち下部が丸く膨らんでいる点を上げられます。枝垂桜の仲間もその多くはエドヒガンの仲間です。
 次に花期が重なる桜として、ヤマザクラオオシマザクラを上げておきます。この2種はどちらも花だけ見るとソメイヨシノによく似たところがあります。しかし、ヤマザクラ
花期には明らかに葉が展開していて、花の密度も低く、全体的な印象が大きく違いますので、見分けやすいといえます。有名な吉野山の桜はそのほとんどがヤマザクラで、ソメイヨシノと違って明らかに自然環境下によく生えています。都会派?のソメイヨシノよりも自然派?のヤマザクラが好きだといわれる方も多いようです。オオシマザクラは少し厄介で、花の印象は全体的に大変よく似ています。オオシマザクラヤマザクラと同様に花期には葉が展開していますが、花の盛りの頃の葉はまだヤマザクラほどは目立たず、花の密度も高く、さすがにソメイヨシノの片親であるといえます。しかし、花はソメイヨシノよりも明らかに大きく、桜の仲間では最大級の花を咲かせます。花の色もほぼ真白で、萼筒は細く黄緑色になり、少し赤味のあるソメイヨシノとは印象が違うことがわかります。少しはなれて花が咲いている枝の全体的な印象をつかんでみて下さい。明らかに周囲の桜よりも花の色ではなく小花柄や萼筒などの緑色が目立てばソメイヨシノではありません。

カンザクラ(2月中旬〜3月中旬)
 
萼筒の赤味が目立ち、全体的にピンク色がかる。花弁が散っても赤味のある萼筒が残る。

エドヒガン(3月中旬〜下旬)
 ソメイヨシノよりも花が小さい。
赤味のある萼筒の下部が丸く膨らむのが特徴である。


ヤマザクラ(3月下旬〜4月中旬)
 一緒に展開する新緑の葉の色は赤味を帯びるが、さまざまな色合いがあり多様性に富む。

オオシマザクラ(3月下旬〜4月上旬)
 大きな白色の花が特徴である。ピンクっぽい色は全くといっていいほど感じられない。