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2007年09月19日

第5回北関東支部栃木部会の報告

先週9月2日(日)に宇都宮市中央生涯学習センターで
行った第5回北関東支部栃木部会の報告を致します。
出席者は9名(栃木県7名、茨城県1名、東京都1名)でした。

【内容】講演 宇都宮地方気象台 中垣次長 様
?土砂災害警戒情報について
土砂災害警戒情報は土砂災害から人命を守ることを目的とした
情報で、1996年6月29日に広島県で土砂災害が多発した
ことをなどがきっかけとなり市町村長の行う避難勧告を支援する
情報が必要であることからできたものである。2001年の
「土砂災害防止法」の施行で「土砂災害警戒情報」という枠組み
ができ、2005年9月に鹿児島県から始まった。
土砂災害警戒情報は気象庁の土壌雨量指数と県砂防部局の
土砂災害警戒避難基準雨量により出すもので、横軸に土壌雨量指数
縦軸に時間雨量をとり、あらかじめ設定しておいた土砂災害発生
危険基準線を越えた場合に発表される。
栃木県では現在は試行段階で土砂災害発生危険基準線の設定や
平地で土砂災害の起きる可能性のない格子や山間部で人の住んで
いない格子で基準を越えた場合はどうするかを詰めている段階
のようである。
栃木県の特徴としてはにわか雨や雷雨などの短時間の強い雨が
あるが今回対象にするような災害は5例程度と少ないようである。
短時間のにわか雨が多いのが問題で、雨量予想には基本的に
ナウキャストを使うのだが今までの傾向で動かしているだけなので
雷雲の消滅などは予想できず簡単に基準に達してしまう。しかし
実際は雷雲はすぐに消滅するのでここは人間が介在することに
なるとのことでした。また、にわか雨ら雷雨では重大な土砂崩れ
は起きないので出さない方向のようです。
先日の台風9号では試行ですが初めて情報が出たものと思います。
日光市では湯西川温泉が土砂崩れで孤立ということもありました。

最近の天気の解説
?熊谷の暑さ
?台風と寒冷渦はペアでできることが多い
?気象庁でも台風の進路について外国(中期予報センターなど)の
予想図も参考にしている
?エマグラムからみた安定度

話題提供 大門禎広
?雲断面図の作成・検証
日本気象予報士会から石井賞をいただいた雲断面図に
ついて作り方から実例までの話しをしました。    
東京での天気図検討会では「雲断面図」を時系列予報の
成果品として描きますが、なかなか描けませんでした。
そこでパソコンを使って描けないものかと考えたのが
始まりです。さらに埼玉支部では雷予報実行委員会
をやっており、毎時間のSSIを計算できないであろうか?
と考えていました。
この頃はスグダスはなく過去の天気図やガイダンスなどを
見るために宮崎マイコンショップの会員になっていたところ
同社のHPを見るとRSMの数値データが載っていました。
そこで、これを使ったら雲らしきものが描けるであろうと
思い作成を始めました。
EXCELを使い露点、湿数などを計算することに
しましたが、大変だったのは相当温位です。気象の本には
1行(簡便式ですが)で書いてあるのですが実際の計算は
温位や持ち上げ凝結高度の状態を先に計算する必要があったり
して結構大変です。オマケとして気象庁も簡便式を使っている
らしいこともわかりました。FXJP854と同じ数値が出ます。
一番大変だったのがSSIでした。東京での会合である人
(神奈川県の)に聞いたところ持ち上げ凝結高度までは
温位が保存、そこから上は相当温位が保存するため500hPa
の相当温位が先に出るため逆算して500hPaの温度を求める
という考えたかを聞き、それをEXCEL自作関数として
組み込んで解決しました。
この雲断面図は日々の予想でも結構当たり降水の有無に
関して85%の的中率でした。ただし、総観規模の現象は
よく当たるが夏のにわか雨や冬の日本海側の雪雲の予想が
苦手であることがわかりました。今後は対流性の雲からの
降水の精度向上を目指したいと思います。

?佐野の落雷事故の時(H19.6.10)の局地解析
この日は寒冷渦が西日本までやってきており、関東には
下層に南風が入る状況でした。関東地方に南風が入るのは
関東平野の南東部だけで群馬県には下層の冷気による
高気圧ができます。この日はこの温度や風のシアーが
さいたま?久喜?佐野?宇都宮?大田原にできました。
特にシアーの大きい佐野から久喜にかけて雷雲ができ
落雷事故につながったようです。
参考までに気象台の次長にお聞きしたところ関東平野に
南風が入るとシアーのできやすいとこが数箇所あり、
佐野付近がそのひとつのようでした。

?日光合宿の報告
日光合宿では1日目午後は天気図検討を行いました。
ここで話題になったのは500hPaの-6℃線でした。
7月20日21時AUPQ35の500hPaを見ると輪島と
秋田で?6℃を下回っているにもかかわらず解析図では
?6線が青森付近を通っています。そして次の解析図では
館野が-5.5℃、仙台は-3.9℃です。また12h前は
日本海で?6線が南に下がっていれば良かったのですが
逆に北に凸になっています。立野の数値データを見ると
500hPaは-5.5℃ですが504hPa付近に厚100m程度の寒気層が
ありました。これが原因のようでした。
この件についても次長にお聞きしたところこのように薄い
層は初期値を作成するときになくなってしまうことがある
そうです。ただ、よく見ると24h前には北京付近に寒気が
ありこれがやってきたのだろうということでした。12h
前に?6℃の等温線が北に凸になっているのは解析がおかしい
のでは?とうことでした。
2日目の朝は霧降高原に行きましたが六方沢橋には雲はなく
下には雲(霧)がありました。温度を測ると六方沢橋の
温度は19℃、霧は17℃だったので霧が上昇してこない
ことが実感できました。    

懇親会は「きらっせ」で宇都宮餃子を食べました。
Posted by at 9:20 午前
Edited on: 2007年09月19日 9:38 午前
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