第44回例会 〜山岳気象特集〜

日 時:2013年3月23日(土)  13:00〜17:00
場 所:東京文化会館(上野) 中会議室1
参 加:29名
内 容:
1.話題提供
@山岳気象について                粟澤 会員
西穂独標の南西にある西穂山荘を経営している粟澤会員が、登山者にお天気講座を開いたり情報を送ったり、時には救助に出たりする様子を話してくれました。信州大学との研究のため2700mの雪氷データを採取したり、登山者が天気に興味がもてるように天気教室を開いたりして活動を進めている。山では、地形と高さで気象が大きく変わる。地形の影響で前線が変形したり、山岳波が生じて笠雲やつるし雲ができたり、強制的な上昇気流で雷雲が発生したりする。なお、雪の重みや凍結等で観測器材が破損したり、国立公園内で設置許可が下りなかったりするが、気象データが必要である。

A高山気候について                根本 会員
高山気候は、熱帯高山気候と、温帯高山気候に分けられる。熱帯高山気候では標高3000m以上で1500m付近の気温は18℃以上。年較差が小さいが、日較差は大きく夏日+真冬日となる日もある。代表的な都市としてラパス・ラサがある。温帯高山気候では標高2000m以上で、年較差が大きく、日較差も大きい。

B過去の山岳気象事故例             伊藤 会員
過去の事故例について天気図や気象の実況などを基に発表していただいた。
 (1) 北アルプス薬師岳の遭難(1963.1.2)…2つ玉低気圧の通過後に寒気南下、激しい北西流の中、道を誤って東南稜に入ってしまい高校生山岳部が遭難した。
 (2) 立山の吹雪遭難(1989.10)…台風が本州東方海上を通過、一時的に冬型の気圧配置になった影響で立山では吹雪となり、遭難事故が発生した。
 (3) 槍平で雪崩(2008.1)…冬型となって一気に1m以上の新雪が積もり、表層雪崩が発生した。
 (4) トムラウシ山(2008.7)…低気圧が通過し雨でずぶ濡れとなった翌日、天候の回復を期待して出発したが、衣服が濡れていて体が冷えた状態で強行したので、低体温症となって死亡者が相次いだ。
 (5) 北アルプス白馬岳で遭難(2012.5)…軽装で登山をしてしまい、寒気が南下して荒れる天候の中で疲労が重なり凍死した。
 (6) 万里の長城で遭難…寒冷低気圧が通過する中、大雪になり遭難した。

C西穂高で高校山岳部落雷事故(1967年)   藤井 会員
 1967年8月1日、西穂独標で高校生山岳部11名が落雷事故死したことについて具体的な内容を説明した。それによると、独標山頂に落雷した電光が沿面放電となって、尾根づたいにいた高校生の列に次々と伝わった。「生存した生徒の携帯した水筒,カメラが大きく破損し,あたかもこれらが生徒を保護したように見受けられる」。登山計画と週間アンサンブル予報を結びつけて利活用したい。

2.3か月予報検討会                藤井 会員
・この冬の予想と実況
寒候期予報ではエルニーニョ時のパターンから暖冬予想としていたが、3か月予報では寒い冬となることに修正された。実況図と比較すると、だいたい予想図どおりになっていたが、2月の太平洋高気圧の発達は予想されていなかった。

・5月の東日本太平洋側の気温予想
チームに分かれ、予想図から検討した。
 ○Naチーム 30:30:40
 ○Neチーム 20:40:40
 ○Dチーム 20:40:40

◎懇親会(庄や 上野本店)
 16名の参加者で山の話などに楽しく盛り上がりました。これからも、山岳気象について研究していきたいです。