プリミティブ方程式     AZure QuickLink 詳細リンク MeteoSurf
   Originated : 1997-12/08, Last updated : 1998-1/18,1/20
 大気の状態・気象の現象を表現・再現するための方法は種々ありますが、中でも天気予報にとって、
非常に基礎的・根本的・実用的な表現方法が、プリミティブ方程式系と言われる数式表現です。
それは、大気の状態をシミュレートしますので数値(予報)モデルと言われます。

これらの方程式は相互関連を持っています。従って、バラバラに理解しようとしないで下さい。
むしろ、メリハリをつけて学習・納得することが大事だと思います。

メリハリ1 : もっとも大事な方程式は何かということを考えること。即ち、
        話の中心となるべきものは何か、を考えること。 それは「運動方程式」です。
メリハリ2 : そして次ぎには、気体そのものの性質を表現しているとも言うべき「気体の状態方程式」です。

その他の方程式は、極論するならば、「付け足し」的な存在だ、位に思っていると良いかと思います。
即ち、移動に伴い物理量が保存される(不生不滅 不増不減)という条件のもとでの大気粒子の
振る舞い(運動)を制約する条件となるだけだ、と思って下さい。
だだ、いかなる制約となって運動に効いてくるのか、その制約が無くなったら制約が有るときに比べて
いかなる差異が生じるかを認識しておく必要はあるかと存じます。
(ここまで調子よく書いてきて、筆者の筆は止まりました。そんな説明を非力な自分に出来るだろうか、と)
ま、気長にやって見ましょうか。

1. 大気の運動方程式〈水平方向と鉛直方向の2式あり)
          大気の塊を質点と見做して、その質点にかかる力の釣り合い(傾度力、遠心力、転向力)
     から速度が計算されます。そして、時間を乗じて大気の位置が求められます。
          地球という回転球面上の運動を考えるとき、渦度方程式が得られますが、
          通常は、移流項と収束・発散項のみ問題となる様です。(即ち、渦度移流と収束・発散を見極めること)
 
          地衡風平衡、静水圧平衡、気圧傾度力、転向力、速度、鉛直P速度、渦度、遠心力等がここで登場してきます。
          温度や水蒸気量はここでの本質的な問題とはなりません。

     なお、これらのお馴染みの項目が上述の「付け足し」扱いした制約条件によりいかなる影響を受けるかを
     承知しておくとよいと思います。

2. 気体の状態方程式
     一様な状態の気塊は、P,V,Tの間に、ボイル・シャールの法則が成立します。
          この式には「時間」という概念は入っていません。即ち、時間を超越して成立している関係式です。
     時間に縛られている1.の運動状態のいついかなるときも、この気体の状態の関係は成立しています。
     上述の「付け足し」の制約条件とは、大いに働き方が違います。
     この認識は非常に重大な事だ、と私は思っています。  
           気圧の項の 式 P=ρRT の解説を参照して下さい。

3. 大気の連続の式(質量保存の法則)       (リンクは工事中です)
     大気は連続した流体であるから、或る断面を通過するとき、その断面への流入質量は、
          断面からの流出質量に等しい。 収束・発散と言う状態を論ずることとなります。

          天気図上に直接収束・発散が表示されることはありませんが、前線等の転移層や高気圧・低気圧における
          大気の吹き出し、吸い込みを考えるときに関係して来ます。 

4. 熱力学の第一法則(エネルギー保存の法則)    (リンクは工事中です)
     大気の運動、特に鉛直方向の上昇/下降の時断熱変化をします。
     温度や圧力は変化しますが、議論対象とする系の内外のエネルギーの授受はありません。

     エネルギー保存則も天気図上には表示されないでしょうが、エマグラムはこの法則の塊みたいなものです。 
          温度や温位、相当温位、気温減率がここで登場して来ます。

5. 水蒸気保存の法則               (リンクは工事中です)
     大気中の水蒸気は気温、気圧が変化するに伴って、相変化します。
     相変化があっても、系外に降水等となって去らない限り、水蒸気量の増減はありません。
     水蒸気の保存則はそれなりに重要なのでしょうが、むしろ水と言う物質の「相変化」を良く理解しておくこと
     がもっと大事だと思っています。

          なお、ここで水蒸気量、湿数、比湿など降水量に関係する用語が登場して来ます。
     1.により大気の高度が決まり−−>大気の圧力が決まり−−>H2Oの状態が決まり−−>水蒸気の凝結
     という図式となるでしょう。 

以上の式に登場する変数は、
       3方向の速度、空気の密度、気温、比湿、気圧 
の7種類で、適当な初期値からスタートして、スーパーコンピューターにより手順に従って計算されます。
この辺りの説明は、岡村存著「天気予報はどこまで正確にできるか」〈森北出版)が手ごろな参考書です。

数値モデルにより、大気の状態が「天気図にいかに表現されることとなるか」の理解と読図が次の課題になります。

これらの式の理解を前提として、また、これらの式を吟味して行く過程で、皆さんお馴染みのコリオリ力、
渦度、収束・発散、地衡風の風速、鉛直P速度、層厚、温位、断熱変化、水蒸気の相変化などが登場して来ます。
気象の理論の各項目で見て行くこととします。


なお、必要に応じて気象理論理解のための基礎的な知識を復習・参照して下さい。       ベクトルおよび  微積分        運動  および  回転      力   および  圧力     仕事  および  エネルギー
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