富士山頂実験室 報告書 2011年 気象実験クラブ

日本気象予報士会 気象実験クラブ
富士山プロジェクトに関する報告書
2011年度


山頂への登山コース

            
山頂気象庁測候所


一般社団法人日本気象予報士会
気象実験クラブ

文書名:富士山プロジェクト報告書 
報告日:2011年11月04日
報告者:気象実験クラブ代表、佐藤 元

実施主体:一般社団法人日本気象予報士会気象実験クラブ(INTERFREX)
実施期間:2011年6月〜8月
実施場所:富士山および横浜市内の出前講座開催場所

協力機関:NPO法人富士山測候所を活用する会
一般社団法人日本気象予報士会幹事会(CAMJ)
     一般財団法人日本気象協会(JWA)
     国立大学法人横浜国立大学教育人間科学部気象学研究室(YNU)
     一般社団法人日本気象予報士会サニーエンジェルス
     独立行政法人科学技術振興機構(JST)
(以降、誤解のない範囲で、本報告書において表記を一部省略し、あるいは略号で記述することがある。)




目次

序

1.	系譜
2.	活動の詳細
3.	所見
4.	ロジスティックス
5.	取材 & 広報
6.	発見
7.	問題
8.	対策
9.	今後

謝辞

添付資料1 写真
添付資料2 富士山観測記録2011Aug(速報値)







序

多くの関係機関から資金的ご支援や技術的ご協力を頂き、そして重荷を担ぎ高山病とも闘いつつ富士登山して下さったメンバーや、地上会場で通信が途絶しても手際よく講座を運営して下さった多くのメンバーの皆さんのおかげをもって、富士山プロジェクトを終了することができました。終了の報告に当たり、このプロジェクトの成り立ちの経緯を概略記しておきます。

気象実験クラブでは、過去3年間、地上の学校や公民館などで、実験を主体とした出前講座を企画し、主催し、また各種の財団等の企画に参加してきた。こうした講座における実験は、子供たちには大変興味を持ってもらえたが、私たちが提供するコンテンツをさらに興味深いものにし、また印象深いものにするため、通常行われている実験形態を改善してみる。すなわち、実験の場所をより魅力的な場所にしてみよう。宇宙空間や、南極、エベレストで実験するには、費用も体力も必要である。身近な存在である富士山なら、宇宙に行くほど遠くもないが、どうであろうか。いざ実施しようとするとなかなか大変である。たとえ富士山であっても、山頂まで子供たちに登ってきてもらうのは、これまた大変である。そこで、講師は富士山頂で、子供たちは地上の会場で、リアルタイムで同じ実験を行い、QAしながら、講座を進行する。これならできそうである。こんな思いのもとスタートした。
2011年1月、川崎市市民活動センターのフェアーで構想発表、2月にNPO法人富士山測候所を活用する会の夏季研究に応募・採択、同じ2月に日本気象予報士会幹事会の承認を得て、さらには、同NPO法人ならびに日本気象協会のご協力も頂けることとなり、プロジェクト実現へのスタートが切られた。
詳しくは、以下記述させていただきます。


1.	系譜

2011年
1月23日   :NPO法人富士山測候所を活用する会の研究発表会出席
1月30日   :川崎市民活動センターにて富士山プロジェクト構想を発表
2月08日   :NPO法人富士山測候所を活用する会の夏季研究等募集に応募、採択
         http://npo.fuji3776.net/study/project.html
2月19日   :日本気象予報士会幹事会にて、富士山プロジェクト企画の紹介。承認された。
5月15日   :富士山へのアクセス確認、残雪の状況確認および、5合目での通信可能性確認
6月04〜05日:富士山の残雪の状況確認および、7合目での通信可能性確認
6月19日   :富士山登山ルート(富士吉田口)検分、
7月01日   :YNU気象学研究室キックオフミーティングにて構想紹介
7月07日   :気象実験クラブキックオフミーティング開催

7月15〜17日:山頂の気象庁庁舎からの通信可能性確認登山
7月18〜31日:地上での送信、受信状況の確認実験、
8月02〜04日:出前講座(山頂の気象庁測候所〜地上会場1、パルシステム新横浜本部にて)
8月26〜28日:出前講座(山頂の気象庁測候所〜地上会場2、南希望ヶ丘ケアプラザにて)




2.	活動の詳細(主要部のみ):

7月15〜17日:
   活動内容:山頂の気象庁庁舎内からの通信可能性確認、
        庁舎内の電波受信状況の最良の場所の確認、
        庁舎内でのLAN設備への接続および通信の可能性確認、
        3G回線の実地使用確認、地上における受信状況確認、
   登山者 :気象実験クラブメンバー:3名
   地上側 :気象実験クラブメンバー:6名
7月18〜31日:
   活動内容:地上での送信、受信状況の確認実験のため、USTREAMおよび
        SKYPEによる画像、音声の送受信の使用勝手の確認
   地上のみ:気象実験クラブメンバー等:8名、
8月02〜04日:
   活動内容 :富士山頂気象庁庁舎内〜地上のパルシステム新横浜本部をイン
         ターネットで結び、それぞれの場所で同じ実験を同時に実施し、
         画像と音声で見える様にした。画像が遅延、中断したときは、
         バックアップ手順に従い、代替的実験を行った。
   実験内容 :山頂での実験は、地上との気圧の差が明瞭にわかるものを考えた。
         マシュマロ、ピーマン、缶ビール、洗剤の泡、菓子の袋等を
         実験素材とした。 
   登山者  :気象実験クラブメンバーおよびYNU学生:6名
   地上側  :サニーエンジェルスメンバー、YNU学生:7名
   参加者  :子供たち、保護者総数約30人、スタッフ等9人
   特記   :NPO法人の理事土器屋由紀子先生にも講座へ登場頂き、また事務局
スタッフの方々数名の参加、山と渓谷社からのご参加も頂いた。

8月26〜28日:
   活動内容 :山頂の気象庁庁舎〜南希望ヶ丘ケをインターネットで結び、
         それぞれの場所で同じ実験を同時に実施し、画像と音声で
         見える様にした。降雨等で画像が中断したときは、バック
         アップ手順に従い、代替的実験を行った。
   実験内容 :山頂での実験は、地上との気圧の差が明瞭にわかるものを考えた。
         マシュマロ、ピーマン、缶ビール、洗剤の泡、菓子の袋等を
         実験素材とした。 
   登山者  :4名
   地上側  :7名
   参加者  :子供たち、保護者総数約10人、スタッフ等7人
   特記   :2012年8月にも実施するよう要請あり。

3.	所見

このような企画は過去に実施例がなく、画像・音声の送受信が当初から
   懸念材料であった。PCの電源の持ち時間も懸念材料であった。通信イン
   フラの使用可能性も懸念材料であった。2011年度は、NPO法人事務局
   とも打ち合わせし、富士山頂の庁舎が利用できることとなり、電源問題は
   解消した。また、今年度は、、来年度へ向けた本格実験のための試行段階
   と位置付け、3G回線を主体とし、LANは使用可能性を確認しておく、こと
   とした。
   実際行ってみると、予期したことではあったが、画像・音声の送信遅延、
   中断が発生した。これにより、地上の会場における実験の手順も狂うこと
   となった。この時、会場では、代替的な実験や話題に即座に切り替えられ
   る態勢をとるようにしておいたので、大過なく講座が進行したと思われる。
   
   山頂〜地上間で、画像・音声がつながったときは、子供たち、施設側
   スタッフからの満足が得られたことと思われる。(下記、注記*)
   8/4は、パルシステムの理事さんから、8/27は南希望ヶ丘のスタッフから
   画像・音声で、感謝の言葉をいただいた。

   なお、登山途中では、気象観測、雲の観察等随時実施した。
   UVI、動脈血酸素飽和度などの測定も行った。

注記*
   山頂〜地上で、画像と音声がやっとつながったとき、地上会場においては、子供たち
   の反応もさることながら、付添いのご父兄からの強い反応(驚きと安堵)があった、
   ということを、10月に入ってから、地上会場に参加したスタッフから聞きました。

4.	ロジスティクス
電源:PC2台、ビデオカメラ等の電源(バッテリー)の使用継続時間に限界があるため、当初
ソーラーパネル購入を検討した。測候所の電源使用可能となったので、購入は行わなかった。
水 :測候所には、自由に使える水は一滴もない。全て自分で荷揚げする必要があり、数Kgの
加重負担となった。
使用後のペットボトルは、全て自分で持って帰るので、荷物がかさばることとなった。
  食糧:測候所での食事は、すべて自炊あるいは、持参物で賄った。2泊3日のごく短期間では
あったが食事を各自用意するのは、それなりに大変であった。
  他 :登山においては、高山病対応、老年者対応のため、7合目の山小屋で1泊した。
頂上では、3回の登山すべてにおいて、測候所に到着後、気分が悪くなった者あり。 
PCやカメラ、ケーブル類等の金属製品の荷揚げ・荷下げは、とても負担が大きく、特に
下山時には、膝が痛くなった等、登山した個々人ごとの医学的、体力的な問題が出た。

5.	取材 & 広報
3月24日、NPO法人事務局(東京麹町所在)内で、山と渓谷社による取材(富士山ブック)、
7月16日、山頂庁舎内で、NHK静岡放送局による録画取材、
8月4日、山頂庁舎内で、山と渓谷社による実況取材(富士山ブック)、
8月4日、山頂浅間神社付近で、NHK静岡放送局による実況取材、を受けた。
気象実験クラブ
HP     → http://www.yoho.jp/member/interfrex/fuji3776.htm
 USTREAM  → http://www.ustream.tv/recorded/14753371 まぼろしの滝
http://www.ustream.tv/recorded/15169266 試行実験
http://www.ustream.tv/recorded/15516043 霧中登山
http://www.ustream.tv/recorded/16005782 かげふじ
http://www.ustream.tv/recorded/16305243 山頂・測候所
http://www.ustream.tv/recorded/16306402 登山・景色
http://www.ustream.tv/channel/fujichan3  実況放送用チャネル

ブログ:8/4の地上会場の様子は、
    NPO法人富士山測候所を活用する会、
→ http://blogs.yahoo.co.jp/npofuji3776/10763471.html
    日本気象予報士会サニーエンジェルス、
→ http://ameblo.jp/araiguma-angel/
    のブログにそれぞれ紹介された。
    
6.	発見
気象予報士の中には、結構多くの方々が富士山登頂されることが分かった。
来年度の富士登山者の広がりが把握できることとなった。

7.	問題
送受信のための通信状況の不安定さ、登山&宿泊のための費用の負担。
  USTREAM、SKYPEが比較的順調に使用できることもあれば、まったく使え
  なくなることもある。

8.	対策
通信衛星電話回線の利用検討。回線の遅延・切断時のバックアップシステム・
切り替え手順の開発が必要である。

9.	今後
2011年11月20日:JSTのサイエンス・アゴラ出展予定
   2012年01月中旬 :NPO法人富士山測候所を活用する会の研究発表会
               にて発表予定 
   また、この富士山プロジェクト活動への参加も、地上の講習会会場での参加だけでなく、
実地の富士山に登ってきてもらい、体験的に学べる場を構築したい。
   この活動を、来年度以降も継続できるための、多くの機関・人々の理解・連携
および、運営・実行するための仕組みの構築が必要である。 

謝辞:
   関係機関・個人から財政的、技術的、体力的ご支援を頂き、富士山プロジェクト
を終了することができ、また来年度への展望もひらけてきました。
ここに厚く感謝する次第です。
ありがとうございました。