日本気象予報士会活動 リレー随筆
 
リレー随筆4


そよ風のささやき From 神戸
小野田 リカ (兵庫県)
 

 「そよ風のささやき」。神戸の町なら、ハイカラな言葉もとけ込んでしまう。私、生まれも育ちも神戸。血統書を付けたいくらいの、生粋のサラブレッド・神戸っ子だ。

 神戸の市街地は、海と山に挟まれていて、海と山が近い。「みなと神戸」発祥の地・メリケンパークから「チャイナタウン」・南京町を通って、「山の手」・異人館が並ぶ北野坂までは、歩いてわずか1時間足らずと、市内観光コースは、十分に徒歩圏内だ。

 海から数キロのところに、六甲山系がほぼ東西に連なっている。

 海風が山に届く。六甲山系の緑の薫りを乗せて、町中に広がる。行き交う人の呼吸と一緒になって、町を包み込む。「神戸ブレンド」かしら。

 神戸の四季は「風」を抜きにしては、話すことができないと思う。今回は、これから来る夏に吹く「神戸の風」をお届けしよう。

 「爽やか」という言葉がぴったり似合う神戸!神戸の夏も、決して例外ではない。

 そもそも、関西地方の夏といえば、不快指数の代名詞のようにいわれている。確かに、盛夏8月の最高気温を平均すると、大阪は33.0度。沖縄・那覇の30.9度を、優に上回って堂々の日本一だ。夏の選抜高校野球で、北日本勢はまず、実力発揮の前に暑さにまいってしまうというのも、納得。暑さの訳は…ヒートアイランド現象に加えて、こんな一説もある。大阪市の東側に広がる生駒山地と金剛山地、また、西の淡路島にある津名丘陵との間で、二方向からのダブル・フェーン現象が起こっているのだという。

 また、京都も負けてはいない。「京の油照り」という言葉が昔からあるが、京都は四方を山に囲まれ、市街地は割と平坦な盆地。大阪ほど地下街が発達していないから、移動の基本は地上。ひたすら、無風状態の中、日差しに耐えて歩く、我慢大会!まるで、フライパンの上の目玉焼きだ。生まれてから高校まで秋田育ちで、現在、京都で暮らしている友人は、毎年、夏場には微熱が約ひと月続くという。

 京都の史上最高の最高気温は39.8度。ここまで来ると、気温か体温か、小柄な女性の夢体重か、どれにしますか?…ってな究極の選択だ。

 この39.8度を記録したのは、史上最強の猛暑の年・1994年の、8月8日。この日の最高気温は、大阪39.1度、神戸38.8度。いずれも観測史上最高の最高気温を記録している。太平洋高気圧に加えて、南海上に発生した台風13号と14号からの暖かく湿った空気が「効いた」!京阪神は、朝7時-8時の段階ですでに30度を越えて「真夏日出勤」。午後も気温は上がり続け、午後2時-3時に前述の最高気温を記録した。午後3時現在の風速は、京都1.8m、大阪4.9m、神戸5.9m。京都は、この日1日の平均風速が1.6mと「凪」。大阪は大阪湾からの西風が入るが、海から市街地までは少し離れていてるし、町の中心部である「キタ(梅田)」や「ミナミ(難波)」は高層のオフィスビルが立ち並び、風は届きにくい。おまけに、大阪湾の臭いが「どぶ臭い」とはよく言われている。(私は大阪が大好きだが、確かに大阪の夏の風はいい香りとは言えないと感じる。)神戸は、市街地と海が近く、海風が出やすく、届きやすい。「瀬戸の夕凪」はあるが、近年、凪の時刻は遅くなりつつあり、午後8-9時だ。すでに日は暮れているから、比較的しのぎやすいといえる。

 さて、夏の夜といえば…これしかない。ビールだ!!平成14年度の都道府県別ビール販売(消費)数量によると、成人1人あたりに換算した数量は、大阪府全国3位、京都府全国5位と、夏のあふれる熱気とほとばしる汗を象徴しているかのようだ。これに対し、兵庫県は全国27位と「大人し目」。近年は、通年に占める夏のビール消費量は低下傾向(つまり、夏ではない季節にも、年中おしなべてビールを飲む)であり、決して一概には言えないが、やはりビールといえば夏の蒸し暑い夜を、まずはイメージする。

 そこで、「神戸的・夏の夜の過ごし方」をご提案! 年中おいしいビール(笑)とあわせて、夏の夜はワイングラスを片手に「夕涼み」はいかがだろう?神戸気分を味わうにはもちろん、「神戸ワイン」がオススメだ。神戸ビーフと同じく、神戸っ子が、毎日、神戸ワインを飲んでいるわけでは決してないが、神戸ワインは、通な神戸っ子好みの、ハイセンスでおしゃれな味に仕上がっている。神戸で収穫した葡萄だけから作られているから、名実ともに「神戸のお味」。ラインナップの中でも、特に、夏の夜にオススメなのは「セレクト(白・辛口)」だ。透明感あふれるさわやかな風味は、涼しげなオードブルやフレッシュチーズにぴったりで、100万ドルの夜景との相性も抜群!また、フルーティーな葡萄の香りには、神戸の風の薫りがぎゅっと凝縮されている。

 海風が グラス揺らして 乾杯の音

 夏の神戸でお会いできるときを、楽しみにしている!! グッドラック!
 

第3話

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